85歳での工学博士号取得にあっぱれ!

2022年6月11日(土)山梨工業会東京支部定期総会におきまして、東京支部監事であります埋橋英夫(機械、昭和34年卒)さんから、この3月に母校山梨大学大学院にて工学博士の学位を見事取得されたお話がありました。

多くの総会出席者がいる中、「永久磁石モータ駆動圧縮機を組込みこんだ家庭用インバータエアコンを世界標準として正式に認定させたい、故郷へ錦を飾りたい」の演題で、エアコンを取り巻く環境からお話が始まり、山梨大学卒業後、日立製作所栃木事業所に配属され,直ちに企業における研究・開発人生がスタート、更に業界TOPの技術開発を中心としたお話に進み、今回の学位(工学博士)取得の経緯と論文内容の詳細となり、皆さんからはその一貫した熱意と取組みに賞賛の声が多く上がりました。特に、85歳になっての取得は日立製作所では最高齢であり、また、後輩の皆さんに母校へのチャレンジのエールを送られた際には拍手喝采となりました。

「大原メルマガ」より(大原 直:土木、昭和48年卒)

 元伊那北高校校長の埋橋(うずはし)朝賢さんのご子息の埋橋英夫さんは、父の異動に伴って伊那北高校(7回)から諏訪清陵高校へ転校され、山梨大学工学部に進まれ、日立製作所入社後は家庭用インバータエアコン一筋に研究開発に勤しまれました。そして2022年3月18日に母校の山梨大学で工学博士号が授与されました。
埋橋さんの凄いところは、75歳になって工学博士号の取得を志し、10年間にわたって、住居のある栃木市から甲府にある山梨大学へ通い詰め、ついに85歳で見事工学博士号を取得されたことです。日立製作所の数百名に及ぶ博士号取得者のなかで最高齢の学位取得者となったそうです。
 学位論文は「家庭用エアコンの性能向上」でして、永久磁石駆動圧縮機を組み込んだ家庭用インバータエアコンを世界標準として正式に認定させたものです。40年前に埋橋さんが日立研究所を総動員して、省電力型エアコンを開発し、「日立冷房暖房エアコン」を製品化しました。
 国から補助金をもらって開発した「永久磁石内蔵モータ駆動圧縮機」や電力会社から開発費を貰って開発した「冷房暖房兼用エアコン」はともに世界標準と認められ、今後50年は使用される製品に贈られる「未来技術遺産」に認定されました。
 しかし、経済産業局出版誌にPRしたが評価されず、博士論文の必要性を痛感しました。これがバネとなって今回の学位取得に結びつきましたが、これまでのご苦労が報われたものと思います。その信念と情熱と体力は素晴らしいと思います。我が家にあるエアコン「しろくまくん」にも40年前の英知が繰り込まれています。
 埋橋さんの凄いところはそれだけではありません。埋橋さんは伊那市高遠のご出身で、小中学校や伊那北高校、諏訪清陵高校の各同級会にそれぞれ、毎年栃木市から長野県へ高速バスで行って参加されていることです。栃木市では
地元ロータリークラブ会長を務める傍ら、学位取得のために甲府に通い続け、その合間に伊那や諏訪に行くそうです。埋橋さんの並外れた行動力と、同級会を大事にする感性と心意気はもはや超人的と言って過言ではありません。
 一方、5月2日の日経新聞の1面に、「低学歴国ニッポン」と題して日本の博士減と研究衰退が報じられています。文科省によれば、日本は人口100万人当たりの博士号取得者数が米英独韓4か国を大きく下回り、中国を含めた6か国中日本だけが減少しています。科学論文数の国際順位も、1990年代3位であったが、2018年には10位に落ちています。平成の30年間の、産業競争力も低落しており、日本の将来の技術力低下が大変危惧されています。

 そうした中で、75歳で学位取得を志し、85歳で学位取得したことは実に立派であり、私はギネスブックものと思います。埋橋さんの学位取得と超人的な行動力に「あっぱれ!」を差し上げ、祝意を贈りたいと思います。なお、今年4月に富士電機の代表取締役会長となられた北澤通宏さんは伊那北高校(22回)から山梨大学を卒業されていますが、先輩の埋橋さんの今回の快挙を既に祝福されたそうです

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