産学公技術交流会“目からうろこ第11弾!” 報告

降籏 廣行

1、はじめに

都立産業技術研究センター(循環型技術研究会)と山梨工業会(首都圏支部合同連絡会)の主催による“目からうろこ”と銘打った技術交流会も11回を迎えた。

昨年の記念講演会は東京では46年ぶりという大雪に見舞われ、参加者には大変なご迷惑をかけた。

幸い今年は穏やかな天気となり、講演会に120名、懇親会に100名程の参加者を得た。

今回も魅力あるテーマが揃い、第一線で活躍中の講師に講演して貰うことが出来た。

講演会は都立産業技術研究センター 鈴木雅洋理事の冒頭挨拶で始まったが、期待通りの充実した内容であった。

また、引き続き行われた懇親会も大いに盛り上がり、盛況のうちに幕を下ろすことが出来た。

2、講演内容

(1)ICTを利用した環境プラントの建設と施設管理運営動向

(株)協和エクシオ 環境本部長  桐林俊光氏

協和エクシオはNTTグループ、KDDIなどの通信事業者の電機・通信インフラ構築を行う、日本を代表する情報通信会社であるが、電力事業や環境事業などへも事業拡大を進めている。

今回の講演では協和エクシオの環境事業(循環型社会対応事業)について、「環境対応技術」から「環境事業の紹介」「ICTソリュ―ション」「環境プラント建設・運営へのICTの活用」まで、事業内容を詳しくお話しして戴いた。

焼却炉・リサイクルセンターなど、身近に感じられる内容を多く含んでおり、参加者は興味を持って拝聴することが出来た。

(2)中小企業の底力―最先端の研究・開発に挑む―

(株)小野電機製作所 代表取締役  小野芙未彦氏

小野電機製作所は社員20数名の中小企業であるが、研究開発ロボットをはじめ、宇宙関連や医療研究機器など設計から組み立てまで一貫して対応している。

また、数多くの企業や大学などとの連携・協業を活発に行っている会社である。

今回の講演では、小野電機製作所が手掛けている、「特殊加工部品」「海底探査ロボット」「月面走行車輪」「医療ロボット」から「球体浮上装置」「三次元的動作機構構造体」など、数多くの事例を発表して戴いた。

こうしたハード面の他にも、仕事への取組みの姿勢や小野氏の座右の銘の紹介などもあり、大変印象に残る講演であった。

(3)次世代ロボットに向けた技術開発

東京都立産業技術研究センター(都産技研)ロボット開発セクター長  坂下和広氏

都産技研には毎年講演をして貰ってきており、都産技研の概要は「ものづくり産業の総合的支援活動を幅広く行っている機関」として、大分理解されてきている。

今回講演のロボット開発セクターは2014年に発足した新しい部門である。

講演では、はじめにロボット開発における日本・世界の状況を紹介戴き、続いて本題である「ロボット開発セクターの現状と将来について」お話して戴いた。

本格的な研究・開発活動はこれからであるが、環境(開発室、試験室、試験設備)は既に整い、T型ロボットベースなどの開発も始まり、今後の活動・成果が大いに期待される。

(4)内視鏡製造の真髄

オリンパスメディカルシステムズ(株)取締役・製造本部長  吉益 健氏

オリンパスメディカルシステムズは、オリンパスの分社化により発足し、内視鏡を中心とする医療機器の開発・製造・販売を担当している。

内視鏡に関する講演は、一昨年・昨年と開発関係の講演をして貰ってきた。

今回は、製造にスポットを当て、オリンパスの内視鏡の紹介に始まり、本題では「国内製造と海外製造の役割」「TPS(トヨタ製造システム)導入」「国内工場での改善」「国内工場への投資と今後」など内視鏡製造について、かなり踏み込んだ話が伺えた。

また、普段目にしない内視鏡製造に関するビデオの供覧もあり、将に、“目からうろこ”の講演であった。

(5)高度情報通信ネットワーク社会の形成促進

元大臣官房技術総括審議官 YRP研究開発推進協会会長  甕 昭男氏

甕氏には、今回の講演では唯一山梨大学OBとして講演して戴いた。

現在、YRP研究開発推進協会会長、(株)中央コリドー代表取締役、IIOT理事長他多くのポストに就かれている。

はじめに「ワイヤレス分野の動向」について話があり、続いて「ビッグデータ対応」「YRP(横須賀リサーチパーク)の活動」「一般社団法人IIOT(相互接続試験)の紹介」から「中央コリドー活動」まで、幅広い内容であった。

参加者は、概要については凡そ理解出来たと思うが、この講演内容であったら、もう1時間位かけて話をして貰ったらどうかと思うほど、中身の濃いものであった。

3、おわりに

この技術交流会は、元々は山梨工業会員主体の交流の場であったが、この2~3年様相が変わってきており、本工業会員と一般の参加者がほぼ半々である。

本工業会の活性化のためには、技術交流会の場を利用して、非会員(一般参加者)と交流することも決して無駄ではないであろう。

参加して戴いた皆様、ご協力戴いた皆様には心より御礼申し上げると共に、今後も継続して参加して下さるようお願いしたい。

主催者側においては、「参加した良かった」と皆様に喜んでもらえるような企画が必要であると考えている。

“目からうろこ第12弾!”の開催日は、既に『2016年2月20日(土)』に決定している。これから半年間ほどかけて企画を練り上げ、改めて案内をしてゆきたい。